丹波の山登りアラカルト

親不知登山考
 以下は昨年、福知山市観光協会に送った手紙の要旨です:親不知に夫婦で熟年登山をしました。先年は林道が工事のため入れずに断念、向かいの青垣町の五台山に登頂。今回も林道入り口のゲ−トに阻まれ、引き返しかけましたが、丁度山の仕事師さんに出会い、ゲ−トをあけていただき、室の桜地蔵に駐車、帰路に再びゲ−トの開門をお世話になることを約して、登山を開始しました。
 林道終点より少し迂回して、荒木山−親不知の主稜線に出、なかなか良い山道で、ふるさと探検隊の記念ボ−ドなどを見ながら、90分で頂上に着きました。 頂上からは、アンテナ山を手前に、福知山市街、烏が嶽〜三岳山〜大江山、五台山〜多紀アルプス連山の遠望、右下には、豊富用水池の青い輝きなどを楽しみました。良い山なのに、登山者が一人もいないのは、もったいないと思いました。
 登山ガイドに依ると、「親不知とは珍名中の珍名であるが福知山側では聞かないと云う。福知山市街方面からは、山麓の室、市寺の名をとって室山、市寺山と云い習わしてきた」とあります。
 親不知、子不知の名で知られた、生き別れの難所が有名なので連想から、家内が、なにか姥捨て山の感じがするといい、親不知の由来を考えながら帰路につきました。2つ目の東に回るチェックポイントを間違えたのか、北に向かう稜線から抜けられず、引き返しましたが判らず終いで、覚悟を決めて北に向かいました。こちらも黄色のテ−プが散見できる登山道でしたが、室とは尾根一つ離れた、小野脇の林道に下りました。
 採石場の近くの市道に出、通りがかった青年の「困っているときはお互い様」の好意に甘え、室の林道入り口まで車で送っていただきました。本当に親切な気持ちの良い好青年でした。予定より1時間遅れで駐車場に帰り着き、待っていていただいた山の仕事師さんにも迷惑をかけました。
 思いがけない、お二人の方の好意で、親不知登山ができ、また一つ思い出の山ができました。福知山人の温かい好意に心より感謝を申し上げます。
 山中にコ−スガイドが殆どなく、下山ル−トが分かりにくく、整備されると市民の山として、もっと愛好家が増えると思います。
 老齢化社会の中で、次の民話創作をお薦めします。親不知由来噺し/室・市寺の孝行村(素案)/いつの時代の事ですか/室・市寺に年寄りを大切にする村がありました。/飢饉が起きました。/お役人:「口減らしのため、年寄りを差し出せ」/村人:裏の室山・市寺山に老人を匿い、村で世話をする。/役人:「親はどうした」の詰問/村人:「親はいずこにあるか知りません」=「親不知」命名の由縁/翌年またもや無理難題/役人:「お殿さまお国替えで余興をせよ」/若者:困った、どないするべ/年寄りの知恵が発揮/「どっこいせ節」で面目を施す=「福知山音頭」の原型/慈悲深いお殿さまの許しを得て、老若男女、晴れて仲良く幸せに暮らしましたとさ。/老人を大切にしてきた孝行村の創作民話です。・・/おそまつ。
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丹波の山登りの楽しみ
 ロ−タリ−をしていて不便なことの一つは、好きな山登りが十分にできないことです。登山と云えば日本百名山の記事が、皆様の頭に浮かぶと思いますが、私の登山は、有名な山は年に一度程度で普段は手近な丹波の山歩きをしています。家内と二人で、時には子供も一緒に今はやりの熟年登山で、年に十山を目標に登っています。特に雨の降らない特異日は、わが家の絶対の登山日になっています。
 綾部では、質山峠の霊山、四つ尾山、中筋の甲ケ岳、高津の高岳、位田の高城山、小畑の空山、東八田の弥仙山、蓮ガ峰、上林の君尾山、頭巾山、天狗鼻、・・・昼からでも一寸した運動に気軽に出かけ登れます。
 周辺では、和知の長老ケ岳、三和町の鹿倉山、多紀連山周辺の三嶽、小金ケ嶽、白髪岳、三尾山、摂津の剣尾山、亀岡の半国山、福知山の親不知、鬼ケ城、三岳山、氷上の五台山、宮津の大江山、明石岳、由良ケ岳、赤岩山、高竜寺ケ岳・・・丹波アルプスと言われる多紀連山は岩山も多く、一寸したスリルも味わえます。さらに足を伸ばして、粟鹿山、東床尾山、藤無山、氷ノ山、鉢伏山、総武岳、七種山、雪彦山・・・まだまだ登る山は無数に残されています。
 高山の場合は、登山口が便利で、ある程度高い位置から登り始めますが、平地から登る丹波の山でも山登りの所要時間は、同じ程度見込まれ、岩場などもあり結構な山登りです。頂上からの眺めも遜色なく結構日本海や瀬戸内海までも見通せる山があります。
 丹波の山登りは、日帰りで行けるのが便利です。ゴルフは勿論だと思いますが、テニスやスキ−などのスポ−ツと異なり、山登り自体には体力さえあれば良く、技術や練習が全くいりません。誰でも出来るスポ−ツなので、最近は熟年者や若者の姿も、便利の良い山では、かなり見ることが出来るようになりました。
 一方、山道さえ定かでなく、迷わないようにマップとコンパスを使いながら、テ−プを木に巻き付けて登る、文字通り無人の山も多くあります。孤独を楽しむなら、登山が一番です。鹿避けのネットが尾根伝いに張ってあり、頭だけになった鹿を見たり、熊避けに鈴を鳴らしながら歩いたり、見事な雲海に出逢ったり、栃の巨木に目を見張ったりと楽しみも多くあります。
 昔はもっと里山に人が行っていたと思いますが、人が行かなくなって山道が荒れています。雑木林の山にもっと関心を持って欲しいと思います。
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 −9年前のRC週報の寄稿文−  夫人:鍋師悦子
合歓の花登山行
 早朝の寺山登山、静寂の中、薄紫の合歓の花がきれい。今日も一日健康を願う。ふと人声に耳を澄ますと、頭巾山のことを話されている。よく山で出会うロ−タリ−の方(註:故安村広太郎氏)で本当に元気な人だ。主人は夜更かしをして、多分まだ寝ているのだろう。日曜日はいつもテニス未亡人だと諦めているが、私も頭巾山へ行きたい。
 帰って早速、主人に話す。よく考えるとシルバ−センタ−の人に世話になった植木剪定枝の消却に、1日かかるので無理だと思いながら、末娘・有保の中学参観に行く。帰ると剪定枝を燃やしつけておいたよ、テニスも大会なので午後の表彰式に間に合えば良いように手配したとの事。夕方、次女の有香をロ−タアクトの合宿キャンプに送り出す。
 四時に起床出発の計画でお握りを作る。深夜風が強く目が醒める。主人も起きてきて、燃やしている残り火が心配だと言い、井倉へ見に行ってくれる。
結局、七時に出発する。177で京都府北部に暴風・大雨・洪水注意報発令中と知る。急遽、行き先を行程の短い青葉山に変更する。車は自由が利くので便利だと思う。有保は車に弱く今度も胃の中の物を吐いてしまう。小雨の中を松尾寺に着く。
 傘をさして、三人で登りにかかる。道が濡れており随分登山道が荒れている。マムシに注意の立て札があちこちで目につく。ロ−プの掛かっている岩場や急坂が続く。両手を使ってよじ登るが、有保は子供なのでつらそうだ。昔よく、立山連山を主人と登ったのを思い出す、もっと天気の良い時に、有保に山登りの楽しさを教えなければと思う。80分で頂上に立つ。寺山の三倍半くらいだ。晴れ間が出てきて、下からガスが上ってくる。内陸側の見晴らしが良い。遠くの連山も見える。しかし期待の内浦湾は、ガスで何も見えないまま、食事をして下山にかかる。
滑らないように下るのは大変だ。有保が悲鳴を上げている。しばらくすると慣れたのか多少ピッチが上がる。鳥居のある草むらに着く。薄紫の合歓の花がきれいだ。往復とも誰にも出会わず、三人だけの登山だった。松尾寺に帰り着き、登山日誌に記帳をする。天気が晴れた故か、寺の境内は随分賑わっている。これから登山する人も見かける。
 正午過ぎ、綾部に帰り着き、母から綾部は大雨だったと聞く。テニスの大会も来週に流れたそうな。何よりも家族が元気なのを、ありがたく思う。