ままにゆけば金龍海のほとりおくまったところに白かべのつる山織
工房がみえる。機織のまち綾部の伝統がうけつがれているのであろ
う。手びきの糸、草木染、手織りの手法に近代的創意が工夫される。
金龍海畔に湧きでる鉱泉にひたした草木染糸の絵模様はひときわさ
えて美しい。
 工房からさらに歩をすすめると、本宮山のふもとにはつるやま窯
がきづかれている。素朴な祈りのなかに暮らしの焼物をつくりだし、
その作品には土の香りと人間的なあじわいがにじむ。個性がひかり
古い丹波の心がいきづく。訪れる人がときにロクロをまわし創作の
ひとときをたのしむのもここである。
 神苑の松はときわのみどりをたたえ、白梅は春のかおりをひめて
しずかにゆれる。やがて紅梅がさき、桃の花が人々の目をたのしま
しめる。桃の林をわけいると大本発祥の地・元屋敷が開教の苦難を
ひめてしずかにかたりかけてくる。つつじがすめばあやめ、花菖蒲
とつづき、五大州をかたどった金龍海の水面には水蓮が華麗な姿を
みせる。秋は七草に萩、月にさそわれてひときわ詩情をさそう。神
光は地にみち、「花咲きにほひ鳥うたひ、玉の小琴は時じくに、床
しく ひびき・・・」とある賛美歌そのままに、神と人と自然がうつく
しく調和した綾部の梅松苑は、とこしえに世の親神のしずまる、民
衆のなつかしいふるさとである。人々はここに憩い、ここに祈り、
ここにあそび、ここに学び、ここに行じて明日への活力をつちかう
ことであろう。

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