というのだからすさまじい。王仁三郎以下幹部六十一人が根こそぎ
検挙され、拷問のため多くの犠牲者がでた。綾部・亀岡の神苑は坪
当たりバット(煙草)一つにひってきする捨値で町当局へ強制売却さ
れた。書籍、書画、祭具などは手あたりしだい消却、二四〇棟の神
殿などはことごとくつぶされ、雄大な五六七殿は柱をきりロ−プで
一気にひきたおされた。
 ダイナマイトの爆発、轟音、土煙り、地ひびきは「世の終わり」と
して回想され、大本の「冬の時代」はまた綾部の沈滞にもつながっ
ていた。金龍海は埋めて運動場となり、ポッンと榎木がのこされた
わびしさは、記憶になおのこされていることだろう。この神木の榎
木は由良金一氏の努力によってやっとのこされたのである。約1ヶ
月のあいだ、延九九三四人の人夫が破却に動員され延六七八五人の
警官が取締りにあたったというのだから、大本にくわえられた官憲
の圧力がいかにきちがいじみたものであったかがわかる。
 本宮山にのぼれば、たたきわられた石の手洗いがのこされている。
その右手には爆破された歌碑の片々がつみかさねられ、くずされた
東石の宮が当時の無謀なふるまいをものがたってくれる。三十年余
の風雪にたえてなお生々しい弾圧の爪あとをみつつ、国家権力はな
ぜ、このような狂気の弾圧を大本にくわえたのであろうか、と思う。
 当局はいう。「に憑依せる神の威厳及び右教義の崇高なること
を誇示宣伝する意図のもとに、天皇の叡慮を干犯し、天皇の威徳を
冒涜し、天皇の統治権を無視した神諭と原稿を作成し、共謀してこ
れを神霊界に発表した」と。また「大本教義の根幹をなすものは立

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