高唱しながら通りをねりあるく。そして広場や四つ角では街頭演説
を一席ぶつ。道ゆく人々はびっくりしたり、物めずらしくもあり、
なかば軽蔑の目でみる人もあった。
 ヒラア ヒラアと神軍旗
    ヒラア ヒラアと革正旗
 先頭におしたてて立向かう
    悪魔のぐんぜいと戦いて
 勝どきもろともあぐるまで
    命おしまず進みゆく
隊列は北西町をとおり、山陰線と舞鶴線のふみきりをこえ、郡是製
糸会社の前をすぎ橋のたもとで折りかえすのがならわしで、週に二
回ぐらい定期的におこなっていた。これは奇ばつなデモンストレ
−ションで、この風がわりな集団を一目みようと人々がむらがりあ
つまったという。ところがこれにはつぎのようなエピソ−ドがひめ
られている。ある日大本本部にえらいけんまくで電話がかかってき
た。「大本の集団がいつもわが本社の前を、悪魔だと大声をはりあ
げてとおるが、悪魔とは何ごとだ、幹部をよこして謝罪しろ!」と
ころが大本側ではなぜおこられるのか一向にわからず「いや、そん
な失礼なことをいうはずがない」と弁明するが、一向に話がかみあ
わない。あとでわかって双方とも大笑いしたことだが、「悪魔の軍勢
」を「悪魔の郡是」とききまちがえたのである。
 それはともかく、こうしたいきおいで「立替え立直し」「大正維
新」を全国各地で絶叫してあるくのだから、「長髪族」というニッ

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