して「神論」として大正六年に社会に発表した。筆先は大本の教え
の原典であり、王仁三郎著述の「霊界物語」とともに教典とされてい
る。その筆先のはじめに神は力づよく宣言する。
 「三千世界いちどに開く梅の花、艮の金神の世になりたぞよ。梅
で開いて松でおさめる神国の世になりたぞよ。
 この世は神がかまわなゆけぬ世であるぞよ。いまは強いものがち
の悪魔ばかりの世であるぞよ。世界は獣の世になりておるぞよ。悪
神に化かされて、まだ眼がさめん暗がりの世になりておるぞよ。
 これでは世はたちてはゆかんから、神が表にあらわれて三千世界
の立替え立直しをいたすぞよ。用意をなされよ。この世はさっぱり
つにいたしてしまうぞよ。三千世界の大せんたく、大そうじをい
たして、天下泰平に世をおさめて万却末代つづく神国の世にいたす
ぞよ」
 ここには大本の全精神が集約されている。大本の神はどんな神か
なぜ立替え立直しをせねばならないのか。神の経綸とは何か、また
世界の人類にたいする心がまえなどがかんけつにのべられ、ドキッ
とするようなそのものズバリの表現のなかに、人類救済へのなみな
みならぬ神の愛が感じられる。
 筆先をつらぬく精神は、日本の封建社会の崩壊期から新しい時代
へむかって激変する危機のさなかで、救済を叫ぶ民衆宗教としての
世直しの要求を反映し、かつ継承していた。
 ナオの筆先に「天理・金光・黒住・妙霊先走り、とどめに艮の金
神があらわれて世を立替えるぞよ」とあるが、それは神々の序列と

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