心に決定的な瞬間がおとずれる。
 明治二十五年(一八九二)旧正月元旦ナオが数え年五十七才のと
き、突如霊夢をみせられて尊貴な神々の世界にいざなわれ、旧正月
五日にははげしい神がかりとなって金神(国常立尊)の宣言が発せ
られた。
 その場所は今日大本神苑に元屋敷として保存され、昭和十年の第
二次弾圧事件のさい建物はこわされ、井戸(銀明水)だけが復元し
てのこされている。「むかしの神屋敷、ここに大地の金神さまのお
宮をたてる。ここが世界の大本となる尊い地場」と筆先に示され、
そのしるしに開祖が万年青をうえた因縁の地である。
 神がかりになってからの開祖は神命のままに行動することがつね
となった。生活をささえ子女を養うためにこれまでどおり屑買いや
糸ひきの賃仕事をつづけねばならなかったが、でかけるさいは大神
に行く先をたずね、その指図をすなおにきいて出かけたという。ゆ
く先々では家のおをきれいにきよめて神様をまつるようにい
われるので、みんながあっけにとられ、気狂いあつかいにされたこ
ともあった。それでも開祖は神さまの話をし、笑う者があると「後
で悔やむなよ」とたしなめられたという。しかしたのまれて大神に祈
願すると不思議と病気がよくなおった。また開祖のいわれたとおり
病人が綾部の方をむいて手をあわせ「綾部の金神さん」ととなえる
と、すぐ平癒するというようなおかげがたつことが多く、近在で開
祖を信じしたう人々もしだいにふえてきた。
 だがそのため商いができぬ日が多く暮しはますますゆきづまって

目次 ↑ ←133 134 →135